「エリア51」 アニー・ジェイコブセン著

エリア51 世界でもっとも有名な秘密基地の真実 (ヒストリカル・スタディーズ)

エリア51 世界でもっとも有名な秘密基地の真実 (ヒストリカル・スタディーズ)

書店の棚を物色中に、シブいシルバーの装丁に思わず惹かれた一冊だ。世界で最も有名な秘密基地エリア51について書かれ、おまけに全米ベストセラーとの帯封にあるのが購入の決め手になった。エリア51と言えば、宇宙人の遺体や墜落したUFOの残骸が隠され、米軍による地球外生命体の研究がされているという噂(=ロズウェル事件)もある基地だ。子供の頃テレビの特番でこの手の取材番組に興味を持って、見ていた人は多いだろう。番組の結末は結局のところ、謎は謎のままでおわるのだ。エリア51というとその存在が、かなり有名になりながらも、未だ米国政府は、その存在を正式に認めていない。ジャーナリストの本書の著者は、既に秘密秘匿期間が切れ、開示がゆるされた情報と実際にエリア51で働いていた100人以上の関係者にインタビューして、エリア51の真実に迫るのだ。

ネバダ州の砂漠地帯にある核実験場に隣接するかたちで、グルーム湖の乾燥した湖底部分にエリア51は作られた。エリア51は許可のない航空機の飛行は制限されており、夜間にエリア51を訪れる航空機は、着陸態勢に入っても高度が100mを切るまで、滑走路に照明は灯らない。そして航空機が着陸するとすぐにその照明も消され漆黒の闇が広がるという。エリア51では「知る必要がない者は、知る必要がない」を徹底しているので、その基地の全体像を知る者は米国政府の一握りの者だけである。あるプロジェクトを担当するもは、となりのプロジェクトで働く者が何をしているのか、お互いに知らない。月曜日の朝に、家族と別れ、空港に集合した後は専用機でエリア51へと飛ぶ、そして金曜日の午後の便でまた家族の待つ町へと飛行機で帰るのだ。ただし、家族にも自分がエリア51で何をしているのか話をすることは厳禁である。このルールを守れないものは、仕事を失うし、秘密漏えいの罪で牢獄に入れられる場合もあるのだ。

そこまでして、秘密にされたエリア51で何が行われていたのだろうか。エリア51の設立初期に行われていたプロジェクトは、超音速で高高度を飛ぶ偵察機の開発である。当時冷戦状態であったソ連が、自国内に保有する核兵器を中心とした戦力を米国は喉から手が出るほど欲していた。そこで、ソ連のミグ戦闘機も、迎撃ミサイルも届かない高高度を飛行し、上空からの高性能カメラによる撮影でスパイしようという意図で新型偵察機の開発をCIAを中心としながら、急いでいた。スパイ行為がソ連に知られた場合、核戦争への可能性も否定できないことから、このプロジェクトは極秘で進ませる必要性があったのだ。そして、この偵察機は音速の3倍で飛行し、Uターンするだけでも300㎞の空間を必要とする。任務を達成し基地へ帰還するためには、3万8000リットルもの燃料を必要とするが、これは多くても少なくてもいけない。燃料が不足すればもちろん墜落するし、着陸時に多くの燃料を残しているとその重量でブレーキが破損、滑走路をオーバーランしてしまう。そこで、この航空機は燃料補給の調整を飛行しながら燃料補給機から受ける。ただし、マッハ3で飛ぶためのこの航空機は、めいっぱい減速しても燃料補給機が空中で並んで飛ぶには、あまり速い。そのため、補給中の燃料俸給機との接触事故の危険が常にあった。空軍のベテランパイロットでも音速の3倍で飛ぶこの航空機を操縦するのは命がけであったという。更に、この航空機はソ連のレーダーに探知されないことを追求しステルス化していく。レーダー波を吸収する塗料、そしてレーダー波の反射を拡散する形状とテストを重ねるのだ。この航空機の名は、「オックスカート」と呼ばれ、のちにこれをベースとした空軍機ロッキード社の「SR-71 ブラックバード」となる。

エリア51をここまで秘密にし、世間の目から隠していた理由は米国とソ連の冷戦状態にあり、ステルス偵察機の役割が両陣営の大量破壊兵器核兵器)の保有量の探り合いにあったのだ。これだけの規模の研究開発資金を秘密裏に調達できたのは、第二次世界大戦で被災した欧州諸国のために、アメリカ合衆国が推進した復興援助計画であるマーシャルプランの資金の一部をCIAが融通できたからだという。そして、エリア51は現在も存在し、何らかの軍事的先端技術の研究開発を行っている。もちろんその内容は機密事項で公開されてない。