「米国製エリートは本当にすごいのか?」佐々木紀彦著。
- 作者: 佐々木紀彦
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: 単行本
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米国大学に入学するには、SATやGREという試験を受けなくてはならないようだが、数学的な学力を計るGREは日本の中学程度の数学をキチンと勉強していれば容易に満点が取れるらしい。数学の苦手な人も米国大学では苦労しないということ。ただし、英語の方は大変そうだ。
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授業1コマにつき1冊の難い本を読むことを義務付けられるから卒業までに最低でも480冊の課題図書の読破が必要だと。もちろん内容は英語である。著者は、若い時期にまとまった読書量を果たされることで、読書習慣を身に着けさせることは、米国大学教育の強みの一つだと分析している。やっぱり、入学してからの勉強量は半端ではないようだ。
逆に以外なのは、入学するのは簡単だが卒業するのは難しいというイメージに対し、スタンフォード大学あたりでも9割以上が無事卒業できるし、成績の付け方もアバウトであるという。大学も商売であるから、高い授業料を払って卒業できない可能性があるとリスクが高すぎて学生が集まらないということをちゃんと考えている。ただし、一部のスクールや博士課程は厳しいことは知っておくべきだ。
スタンフォード大学といえば、シリコンバレーのベンチャー企業家を多く輩出している事で有名。米国は日本と違い、ベンチャースピリッツが盛んなお国柄だからだと、著者は片付けない。米国エリート大学出身者は、ベンチャーに失敗してもいつでも1000万円級の職に戻れる保証があるから、リスクが小さいのだと喝破している。それに比べ、新卒一括採用され、転職機会の少ない日本では、失敗が致命的となりかねず、ベンチャーに挑戦する魅力が少ないのだという。また、米国は自由の国で、経歴に関係なく実力次第で大成功できるというイメージがあるがそれは違うという。米国は日本以上の学歴社会であり、エリート大学卒は価値が高く、収入の多い金融やコンサルティング企業に就職するには必須条件である。ちなみにグーグルは採用にあたり博士号取得者が大好きな企業で有名。
本書250ページのうち、大学の実態についての記載は半分の100ページ程度。残りは、著者がジャーナリストとして日本とその他の大国を比較し、将来の我が国の展望を分析している。日本も随分落ちぶれた、今後は下り坂だと聞くことが多いが、まだまだ大国として生き残る潜在的能力は高いと。そのためにも、日本に新しいタイプのリーダーが必要であり、米国大学留学もリーダー育成の手段の一つだとまとめている。このあたりの分析手法や主張の展開は、著者がスタンフォード大学で学んだことで会得した財産の一端なのかと思わせる。
実は、昨夜本書を読み始めて、半分ほど読んだところで就寝。翌日が休日なのに、早朝4時半に目が覚めてしまい残りを朝食までに読破してしまった。というように一気読み出来る面白さがある。高校生の時に読んでいれば、随分影響を受けたかもしれない。ただし、年間500万円の留学費用は親が聞いたら目をまわすだろうね。